発刊: 2019-04-26
どんな本?
何かを測定する、数値化する、透明化する。それは現代においてあらゆる場所で行われています。学校や病院、会社や政府にいたるまで実績を測定され、それが評価に使われることも多いでしょう。
測定そのものは本質的に望ましいものですが、その結果が報酬や懲罰に使われると、さまざまな問題が起きると筆者は述べます。
「目標に設定された数値の達成のために、その他の数値が無視される」のような事例を見たことはないでしょうか?本書にはそのようなことが起きる背景や、どうすれば悪影響を回避できるのかが書かれています。
測定基準への執着
世の中には客観的な数値というものがあります。例えば大学教員なら論文発表数のようなものですが、これを本書では標準化された測定(測定基準)と呼び、最初から最後まで一貫して主題となっています。そして以下の状態を「測定基準への執着」と呼んでいます。
個人の経験に基づいた判断よりも、測定基準に基づく判断が望ましいと考えている
測定基準を公開(透明化)すれば、説明責任を果たしていることになると考えている
測定基準によって報酬や懲罰を決めることが、人々のやる気を起こさせるには最善と考えている
有効でない場面があるにも関わらず、すべてのことに適用できると信じ込ませる魅力が測定基準にはあります。そういった面では科学的というよりもカルト的であるといえる、と痛烈に批判されていました。
ケーススタディ
目次を見ていただけるとわかるのですが、本書はケーススタディが豊富です。大学、学校、医療、警察、ビジネスと金融、慈善事業と対外援助、政府と、多岐にわたる分野において測定基準が誤って使われることでの問題が紹介されています。
詳細な内容は本文を見ていただければと思いますが、「目標達成のために簡単なサンプルを選んでしまう」、「データを抜いたり歪めたりして数字を改善する」、「透明性を高めれば実績も良くなるというのは誤謬である」といった事例が印象的でした。
さいごに
原文がそうなのだとは思いますが、表現に遠回しな部分があり理解が難しいと感じる場面がありました。ただ、ページ数としては200弱なのでそれほど苦労せずに読めると思います。時間のない方は、Part1とPart4(つまり最初と最後)だけでも読んでみると本書のエッセンスが理解できると思います。
自分に課された目標がありその数値に疑問を持った経験のある方は、一読してみてはいかがでしょうか。